楢﨑 瑞の日記

いつか「魑魅魍魎」(ちみもうりょう)を書けるように。

便利すぎて、

忘れてしまう事、

できなくなってしまう事…最近ありませんか?

 

 

唐突にすみません。

サプリメントのCMとかではないです。

 

いやね、西暦も2018年を数えまして、

家電すらスマートフォンで遠隔操作できてしまう便利な時代なわけです。すごいですね。

この調子だと、スマートフォンで電話ができてしまう時代が来るんじゃないかとすら思えます。もうできるって?そうですか。

 

便利なのは至極結構なのですが、

便利という事は「何らかの動作をしなくても済む」ということ。

何らかの動作を省略することで、その動作に関連することが「しづらくなる」こともあるわけで。

 

普段からカーナビに頼りすぎて道を覚えられない、とか。

(そもそも地図が読めなかったりもするのですが、これは私個人の教養の問題です)

 

よく挙げられるのが、「パソコンを使いすぎて漢字が書けない」という例。

変換ボタンを押せば、あっさり変換候補が出てきますから、

「なんとなくこんな形だったかな…?」といった具合に、「漢字の細かいディティール」までは思い出せない、という。

 

昔から言われていることでしたが、

正直、高校生くらいまでは「まさかそんな」と思っていました。

ノートをとる機会も多かったですし、なにしろ学生です。勉学の最前線にいますからね。

 

ところが社会人になり、業務のほとんどをパソコンで行います。

文字を書く機会は激減。取材の時は基本的に走り書き(メモ)なので、

「正しい漢字」を書こうとする行為自体、数が少ないのです。

 

「パソコンは便利だが、やはり字を忘れてしまうな…」

そんなことを強く感じる出来事が、先日ありました。

 

5月27日。下関。

サッカーJ2リーグ・レノファ山口FCが、

下関陸上競技場でカマタマーレ讃岐を迎え撃った日でした。

 

「みんなのレノファ」をご覧の方はご存じかと思いますが、

yabのレノファ取材班では、試合前にピッチレベルで楢﨑による「レポート」を撮ります。

「さあ、きょうもやってやろうぜ!」のアレです。

その試合の位置づけや、煽り文句だったり、状況によってさまざまなレポートになるのですが、

この日は下関開催、そして「2点差以上で勝てば首位」ということで、

「維新発祥の地で、レノファが全国に名を轟かせる時が…」といった言葉を、ディレクターが考えておりました。

 

一応名前を伏せまして、O田ディレクターとしましょう。

あ、このまま読んだら名前がわかっちゃうじゃないか。大●ディレクターに訂正します。これで名前は伏せられましたね。

 

この日、文面はO田(結局こっち)ディレクターが考えていたのですが、

私に伝えるために、いざその文面を書こうとしたのですが…

 

ピタリ。

ペンが止まる。

黒い油性ペンのペン先が、所在なさげに揺れる。

 

 

楢﨑「どうしました?O田さん」

 

大田D「【維新】って漢字がわからねぇ…」

(↑もはや隠す気なし)

 

楢﨑「!」

 

説明しておりませんでしたが、

このO田ディレクター、萩生まれ萩育ち。

「今日よりぞ…」といえば「幼心を打ち捨てて」と食い気味に反応し、

彼の前で吉田松陰先生の「先生」を付け忘れようものならほぼ脊髄反射で「呼び捨てにすな!」とツッコミを入れるという、

理想的かつ標準的な萩市民といっても過言ではありません

 

そのO田ディレクターが!

「維新胎動の地」、萩に生まれ萩に育った彼が、

よもや「維新」という文字を忘れてしまうとは!

これはもう、パソコン全盛時代の弊害以外の何物でもあるまい!

なんでもかんでもパソコンで済んでしまうこの時代が!

彼から!原理主義的萩ニストたる彼から!「維新」という二文字を奪ったのです!

 

みなさんにも、こんな体験があるのではないでしょうか?割と毎日です。私は。

 

 

書き慣れているはずなのです、彼は。

「維新」という文字は書き慣れている「ハズ」なのです。

しかし咄嗟に出てこなかった。

これが怖い所なのです。

 

便利さゆえに、文字を書く機会が減ると、こういった弊害が…

便利な時代だからこそ、こういうことには気を付けなければいけないのだな…と思った次第です。

 

 

【おまけ】

O田ディレクター「あのさ、コラムのネタにするのは構わないんだけどさ。もうひとついい?」

楢﨑「なんでしょうか?」

O田ディレクター「サッカーって、テレビ中継とかスタジアムのビジョンとか、経過時間を【通し時間】で表記するじゃん?」

楢﨑「はい」

O田ディレクター「でもニュース原稿を書く時、それを前半●分、後半○分っていう表現に直すじゃん?」

楢﨑「表示が65分だとしたら、後半20分に直すってことですよね」

O田ディレクター「前半45分、後半も45分。つまり、通し時間から前半の45分を引くわけですよ。計算としては」

楢﨑「どうかしましたか?」

O田ディレクター「使ってんだよね。電卓

楢﨑「…は?」

O田ディレクター「いちいち45分引くとややこしいじゃない。だから毎回電卓で45ひいてんの」

楢﨑「わからなくもないですが、それはそれで面倒では…」

O田ディレクター「報道として正確な時間をちゃんと出さないとダメだからね」

楢﨑「それはそうですが…」

O田ディレクター「操作早いよ~?使い慣れてるもの。小学生の計算ドリルの頃から

 

いやそれは根本的に何かおかしいのではという言葉を飲み込みつつ、

便利な時代だからこそ、あえて手間をかけてやってみることも大切なのかもしれないなと思いました。